Thundercloud Project

雷雲の中の加速機構を雷が破壊した (Wada et al. 2018)

2017年2月11日、石川県珠洲市の金沢大学能登学舎において、大気電場計が雷雲の接近を検知したのと同時に放射線検出器がガンマ線量の増大、すなわち「ロングバースト」を観測しました。ロングバーストは約1分間継続した後、雷放電によって一瞬で途絶しました。富山湾に設置された5台の長波帯 (LF) 電波受信機は、この雷放電が能登学舎の西15 kmで開始し、約300ミリ秒かけて水平方向に70 km進展したことを検出しました。この放電路の進展は能登学舎の南東わずか0.7 kmのところを通過しており、またその通過時刻はロングバーストが途絶した時刻と一致しました。このことから、放射線検出器の上空に存在した雷雲中の電場加速機構が、水平方向に進展した雷放電の通過によって破壊されたことが直接的に示されました。

これまでも雷放電とともにロングバーストが途絶する事象は世界各地の地上実験・航空機実験などで確認されていました。しかし従来の雷検出技術では対地雷の瞬間など、放電プロセスの一部しか観測することができず、特に雷雲内における放電路の進展といった微弱な事象を観測するには至っていませんでした。今回は十分な時刻精度を持った放射線検出器と、放電路の進展を検出できるLF帯域の観測技術を組み合わせることにより、加速機構の破壊と雷放電との関連を明確にすることに世界で初めて成功しました。

ロングバーストは世界各地で観測されている事象でありながら、発生する条件などが明らかになっていません。また雷の前駆現象として注目されながらも、雷放電が開始する「きっかけ」とどのような関係にあるかもわかっていません。今回の観測事象では放電そのものはロングバーストが観測された地点から15 km離れたところで開始していたため、放電のきっかけにロングバーストは関与していませんでした。一方で今後さらに放射線と雷放電の観測を継続することにより、放電の開始とロングバーストとの関係性が明らかになると考えられます。

図. 雷雲中での粒子加速とガンマ線放射が、放電によって消滅する過程の概念図。

論文の情報

Y. Wada, G. Bowers. T. Enoto, M. Kamogawa, Y. Nakamura, T. Morimoto, D. M. Smith, Y. Furuta, K. Nakazawa, T. Yuasa, A. Matsuki, M. Kubo, T. Tamagawa, K. Makishima, & H. Tsuchiya,
"Termination of Electron Acceleration in Thundercloud by Intra/Inter‐cloud Discharge" (訳: 雲内/雲間放電による雷雲内での電子加速の途絶),
Geophysical Research Letters (17 May 2018) doi:10.1029/2018GL077784 [Open Access]

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